Panasonic DMC-FZH1の動画撮影テストレポート

Panasonic DMC-FZH1

Panasonic DMC-FZH1

Panasonic DMC-FZH1

Panasonic DMC-FZH1

伊丹空港でのテスト撮影

伊丹空港でのテスト撮影

関西空港でのテスト撮影

関西空港でのテスト撮影


DMC-FZH1 4K動画撮影サンプル

先日、4K動画の撮影用にPanasonic DMC-FZH1を導入しました。先週末(4/14、4/15)は大阪滞在だったため、伊丹空港と関西空港で、FZH1のテスト撮影を行いました。

FZH1は、4K動画が撮影可能な20倍ズーム搭載のレンズ一体型のデジカメで、実売価格は14万円前後です。デジカメとしてはかなり高価な製品ですが、ビデオカメラのような使い方ができるので、価格的にも機能的にも、業務用ビデオカメラとの比較がふさわしい製品です。

テストした結果としては、1インチセンサーによる高画質4K動画撮影(30P)、圧倒的な望遠性能、レンズ交換不要、ズームリモコン使用可、NDフィルター内蔵、精度の高いAF(オートフォーカス)、動画連続撮影時間の制限なし。望遠重視の4K動画撮影用としては、実に強力なオールインワンのカメラであることが実感できました。

唯一の弱点は、カメラをパンするときに手振れ補正機能が使えないこと。これさえなければ、まさに完璧なんですが・・。

以下、FZH1による4K動画撮影に関してテストした項目と、それに対する評価です。

(1) ピクチャースタイル
設定により、写真や動画の色調を変更できる。動画撮影で常用したいのは、ダイナミックレンジが広く、編集時に破綻が起きにくいシネライクD。なお、さらにダイナミックレンジが広いが撮影後の後処理が必要なLog撮影機能がオプション(1万円)で用意されている。

(2) ズームレンズ
写真撮影(3:2)の場合、ズームレンズの焦点距離は、35mm換算で24mm(F2.8)~480mm(F4.5)。動画の場合、FHD(16:9)だと25mm~500mmだが、4Kだと36mm~720mmで望遠側にシフトする。室内や風景をワイドに撮りたい場合には、ワイコンが欲しくなるかもしれないが、飛行機の撮影のように超望遠が必要な用途にはとても適している。

広角から最望遠までシャープな写りを実現している。最望遠でも画面周辺部のボケ・光量落ち・色の滲みなどは見られない。20倍ズームとしては、とても優秀。

ズームを動かすと開放F値が変わる。36mm、F2.8で撮っている状態でシャッター速度固定なら、ズームアップすると画面は暗くなっていく。撮影時には注意が必要。

ズームリングは滑らかに動き、一般的なデジカメのズームレンズよりも格段に手で操作しやすい。とはいえ電気式(ズームリングの回転を電気信号に変えて、ズームレンズの動きを制御する方式)なので、撮影しながら手で思い通りに操作するには、それなりの練習が必要。

MF(マニュアルフォーカス)で最望遠でフォーカスを合わせ、ズームダウンしてもフォーカスがずれない。AF(オートフォーカス)でも同じ。1カットの中で、ズームダウン・ズームアップしたい場合、とても使いやすい。ビデオカメラではあたりまえの機能だが、デジカメやデジタル一眼の交換レンズでは、一般的にズームを動かすとピンボケするので、デジカメとしては画期的。

(3) iAズーム
4K動画の場合、iAズームを使うと最望遠が1,440mmになるが、さすがに解像感が落ちる。1,000mm程度までが許容範囲か。iAズームを使用する・しないは、メニューで設定できる。

(4) 電動ズーム
電動ズームレバーは小さいので、撮影しながらの微妙な操作は困難。光学ズームとiAズームの境目で、ズームスピードが変わるので、シームレスなズーム操作はできない。

(5) スローズーム
レンズ横に、スローズームのボタン(正確には、カスタマイズ可能なファンクションボタン)がある。ズームスピードは、メニューから3段階の設定が可能。また、押すたびにスタート・ストップするか、押している間だけ動かすかの切り替えが可能。電動ズーム同様、光学ズームとiAズームの境目で、ズームスピードが変わる。

スローズームのボタン(Fn1、Fn2)

スローズームのボタン(Fn1 [T]、Fn2 [W])

飛行機の撮影の場合、1カットの中でのズーム操作は、動く飛行機をフォローしながら(カメラをパンしながら)使う場合がほとんどで、リトライもできない。後述するズームリモコン(可変速ズームが可能)もあるが、微妙な力加減でゆっくりズームするのは難しい。1カットの中で使うなら、単純に押すだけで一定速度でズーム操作ができる、スローズームが一番使いやすいと感じた。スローズームのボタンがもう少し大きいと、もっと使いやすいのだが。

(6) ズームリモコン
サードパーティ製のズームリモコンを使うと、動画撮影のスタート・ストップと、電動ズームレバーの操作を、三脚のパン棒に取り付けたリモコンで行える。以下の2機種をテストしたが、いずれも動作した。

(A) Libec ZC-3DV (実売価格 9,600円)
(B) Helin HL-R1DVⅡ(実売価格 8,600円)

Helin HL-R1DVⅡ

Helin HL-R1DVⅡ

どちらの製品も、レバーの動かし加減により可変速ズームが可能だが、操作感は (B) Helin HL-R1DVⅡ の方が若干良かった。それでも、すばやくズームを動かすだけなら、レバーを最大限ひねるだけなので簡単だが、常に狙い通りのスピードでズームするのは難しい。スイッチでズーム速度を切り換える方式の方が、確実で使いやすいのだが。

(7) スマホアプリ(Panasonic Image App)
Panasonicが公開しているスマホアプリからも、動画撮影のスタート・ストップや電動ズームレバーの操作ができる。ズーム速度は一定でそれなりに速いため、1カットの中では使いずらい。スローズームを、スマホアプリから操作できれば良いのだが。また、長時間の撮影では、スマホのバッテリー切れの対策も必要になる。

(8) 露出制御
動画撮影時の露出制御は、P(プログラムAE)、A(露出優先オート)、S(シャッター速度優先オート)、M(マニュアル)の選択が可能。

動画撮影では通常、S(シャッター速度優先オート、シャッター速度 1/60秒)を使いたいが、ビデオカメラのように絞りが滑らかに変わるので、カメラをパンするにつれて明るさが大きく変わるような場合でも、支障なく使える。

S(シャッター速度優先オート)では、今どういう絞り値が選択されているか、モニター画面に表示されない。天気が変化している場合、早朝や夕方など明るさが刻々と変わっていく場合などは、適宜 ダイヤルをM(マニュアル)にして、絞り値が適切か(=NDフィルターの設定が適切か)チェックが必要。

(9) NDフィルター
減光用のNDフィルターを内蔵している。例えば晴天日中の撮影で、シャッター速度 1/60秒にする場合、NDフィルターで光量を減らさないと、最大に絞っても適正露出にできない。NDフィルターは、なし、1/4、1/16、1/64の4段階が選べる。状況に応じてスイッチで簡単に変更できるので、とても便利。晴天日中、シャッター速度 1/60秒だと、ND 1/16を使うことが多い。

(10) AF(オートフォーカス)
非常に優秀。4K動画を撮影時、最望遠で飛行機の離着陸をフォローしても、また、1カットの中でズームアップ・ズームダウンしても、日中ならほとんど外さない。常用できるレベルで、一般的なビデオカメラと比較しても同等以上に感じた。
MFでの撮影時、メニューでAFをAF/AEロックボタンに割り当てると、ワンプッシュAFが使える。狙った場所にフォーカスを素早く確実に固定できるので、4K動画でフォーカス合わせがシビアな状況でも安心感がある。

(11) 手振れ補正
4K動画では通常の手振れ補正のみで、5軸手振れ補正は使えない。カメラを動かさない場合、歩き撮りをするような場合には使えるが、カメラを大きくパンする場合(飛行機の離着陸をフォローするような場合)は、揺り戻しが目立つので、OFFにする必要がある。

(12) 夜景
今後、詳しくテストする予定。

(13) その他
・(記録メディアの容量とバッテリー以外に)動画の連続撮影時間に制限がない。
・4K動画を撮影する場合の目安として、約1時間の撮影(動画ファイル1時間分)ごとにバッテリーが1本必要。
・純正のオプションとして、ACアダプター・DCカプラーが用意されている。100V電源は必要だが、これを使えば長時間撮影時のバッテリー切れを回避できる。
・HDMI端子に外部レコーダを接続すると、4K動画を 4:2:2 10bitで記録できる。
・4K動画の長時間撮影でも、発熱による撮影停止は起きなかった。

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私が4K動画の撮影に使ってきた SONY FDR-AX1、Panasonic DMC-FZ1000 と、FZH1 を比較してみました。

SONY FDR-AX1

SONY FDR-AX1

●SONY FDR-AX1との比較

・AX1の4K動画は、ノイズ感が気になる。4K動画の画質は、FZH1の方が良い。
・AX1のズームレンズは、広角から中望遠までの写りはよいが、最望遠では解像感がやや落ちるほか、パープルフリンジ(物の輪郭の色の滲み)が出る。FZH1のズームレンズは、最望遠でもシャープに写る。
・AX1では4K 60pで撮影できる。FZH1では4K 30pまでしか撮影できない。
・AX1のズームレンズの最望遠は630mm。望遠には強い方だが、FZH1の720mmには及ばない。
・AX1にはiAズームはない。FZH1ではiAズームを使うと、最望遠が1,440mmになる。
・AX1では、シャッター速度優先AEで撮っている時でも絞り値が表示される。露出アンダーや露出オーバーになるとアラートが表示されて、NDフィルターの変更を促されるので、撮影に失敗しにくい。
・AX1のAFの精度は高くない。特に動く被写体の撮影には、AFは使えない。
・AX1では、動く被写体を撮る(カメラをパンする)場合でも手振れ補正が使える。その挙動が自然なので安心して使える。
・AX1で使えるSONY純正のズームリモコン(RM-1BP)は、スイッチでズーム速度を3段階に切り替えられるため、とても使いやすい。
・AX1のモニター画面は小さく、特に明るい屋外では見やすいとはいえない。FZH1やFZ1000のモニター画面は比較的大きく、明るい屋外でも見やすい。
・AX1は、MFでフォーカスを合わせる際、きちんとあっているかの確認が難しい。
・AX1は夜景には弱い。夜景に関しては、FZ1000やFZH1の方がきれいに撮れる。
・AX1には、記録メディア(XQDカード)のスロットが2つあり、リレー記録(2つのメディアを使った連続記録)ができる。

Panasonic DMC-FZ1000

Panasonic DMC-FZ1000

●Panasonic DMC-FZ1000との比較

・4K動画の画質は、FZH1もFZ1000も良好。
・FZ1000のズームレンズは4K動画の場合、37mm(F2.8)~592mm(F4)。最望遠でもシャープに写る。
・FZ1000もiAズームを使用可能。この場合、最望遠は1,184mm(F4)になる。
・FZ1000は、電動ズームもズームリングも使いずらい。ズームを動かすとフォーカスがずれるので、1カットの中でのズーム操作は基本的にできない。
・FZ1000では、動画撮影時のシャッター速度優先AEは、絞りが滑らかに変化しないため使いずらい。プログラムAEはシャッター速度が可変になるが、明るさの変化には滑らかに対応できる。
・FZ1000では、ズームリモコンは使えない。
・FZ1000には、NDフィルターは内蔵されていない。
・FZ1000では、動画の連続撮影時間が29分59秒までという制限がある。
・FZ1000は、三脚に取り付けた状態だとバッテリーやSDカードの交換ができない。

Panasonic DMC-FZH1の動画撮影テストレポート” に対して1件のコメントがあります。

  1. Polo より:

    私の所有しているFZH1は、MF時に望遠側でフォーカスを合わせても広角側でフォーカスを維持できません。正確にはフォーカスが外れる焦点距離があります。j-skyさんのお持ちの機種はどの焦点距離でも問題ありませんか?

    現在、この症状が不具合なのか仕様なのかを調査しています。
    完全な私的な質問で大変申し訳ありませんが、お時間がありましたらお付き合いください。
    参考までにこちらのサンプルを置いておきます。

    https://www.youtube.com/watch?v=lmPbtyT5VRA&lc=z223wh2yjzeizl0y204t1aokgryguyugftj33w24xdyurk0h00410

  2. Takashi Hoshizawa より:

    提示されたサンプルのように、目に見えてフォーカスがはずれるという状況は経験したことがないのですが、こちらの被写体は飛行機で、かなりの遠距離で撮影しているからかもしれません。

  3. Polo より:

    なるほど、ワークディスタンスに関係しているかもですね!
    入念に調べてみます。
    通りすがりにお付き合いいただきありがとうございました!

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