SONY HDR-XR520V 使用レポート

 HDR-XR520Vですが、大胆にも購入してすぐに新千歳に持っていって、本番の撮影に使用しました。ハードディスク記録式のビデオカメラの氷点下の気温での動作に関しては、一抹の不安もあったのですが、特にトラブルもなく動作してくれました。ここでは、従来使用していたHC1と比べてどうかといった観点から、使用感を述べてみたいと思います。(写真はクリックすると拡大表示になります)

 XR520Vは、HC1と比べても一段と小型になりました。バッテリーの大きさも小さくなっています。冬の新千歳空港の外周のように、雪の中を徒歩で移動しなければならないような場所では、機材が小さく軽いことは、大きなメリットです。

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写真1: HDR-HC1(左)、XR520V(右)

 XR520Vは、240GBのハードディスクを内蔵し、連続撮影可能時間はFH(最高画質)モードで29時間10分です。約一週間の遠征では、いつも60分テープ20本前後を撮影するのですが、XR520Vだと全てハードディスク内に記録できる計算になります。また、今回バッテリーも最も大容量のタイプ(NP-FH100、約5時間半使用可)を2個用意しました。バッテリーは、寒冷地では消耗するのが速くなるのですが、使い捨てカイロを貼り付けて暖めながら使用したところ、1本当たり4時間以上使用することができました。これは、1日の撮影でHC1のときのようなテープ交換は一切なし、バッテリーの交換もお昼休みに1回だけ、あとは撮影に専念すればよいということを意味します。私が使用しているマンフロットの503という運台では、HC1の場合、テープやバッテリーの交換時に運台からビデオカメラを取り外す必要がありました。XR520Vのバッテリー交換でも、事情は変わりません。さらに、雪が降っていて、ビデオカメラに防寒用カバーをかぶせていたりすると、テープやバッテリーの交換は大変な作業です。交換している間に撮りたかった飛行機を撮り逃したことが何度もあります。新千歳空港のようにトラフィックの多い場所で、テープやバッテリーの交換のタイミングを気にしなくてもよいというのは、とても大きなメリットでした。

 XR520Vは、電源オン時の起動時間や録画開始時のタイムラグが短く、とても撮影しやすいビデオカメラです。HC1はテープ式なので、スタンバイのまま時間がたつと内部でテープがアンローディングされることがあります。こうなると、録画ボタンを押しても録画開始までに4~5秒かかるのですが、この4~5秒というのは、場合によっては致命的な長さとなることがあります。その点、XR520Vは、常にすばやく録画が開始されます。これも、テープを使わないことによるメリットです。

 XR520V 撮影サンプル : Windows Media 1920×1080 (12Mbps) 720×480 (4Mbps)

 撮影サンプルに関して、若干解説します。まず、日中晴天下での撮影(サンプル1)ですが、ビデオカメラがハイビジョン化した段階で既に画質が大幅に向上しているため、HC1とXR520Vの違いは素人目にはなかなか分かりません。

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サンプル1: 晴天

 なお、このカットのサウンドは内蔵マイクのものです。内蔵マイクでは、よいサウンドの収録は難しいので、外部マイクの使用をお薦めします。私は、ECM-HST1というステレオマイクロホン(ウインドジャマー付き)を使用しています。(撮影サンプルのその他のカットでは、全て外部マイクを使用)
 逆光の時など、撮影条件が厳しい場合(サンプル2)の画質は向上したような感じがします。これは、XR520Vの「Gレンズ」のおかげか、あるいは「自動逆光補正」という新機能が有効に働いているせいかもしれません。

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サンプル2: 逆光(テレコン使用(VCL-HG2037Y))

 三脚で撮影する際も、手振れ補正はオンで撮影しています。手振れ補正は、XR520Vで強化された「アクティブモード」を使用しています。三脚に載せた状態で離着陸する飛行機をフォロー(カメラをパンする)しても、不自然な揺り戻しも少なく、あまり違和感なく撮影できました。望遠時の画面の安定性もかなり向上した感じがしました。

 三脚を使って撮る話をしているのに、「手振れ補正が・・」とか「安定性が・・」とかいう話には違和感があるかもしれませんね。被写体が飛行機の場合、35mm換算で500mm~1,000mm(テレコン使用時)という超望遠で撮影をすることが日常茶飯事です。また、空港の周囲にはフェンスがあるので、その上から撮影しようとすると、とても高い(2メートルを超える高さの)三脚の上にカメラを載せて撮影をします。これぐらいの望遠で、それほどの高さの三脚を使うとなると、ちょっとした風であっても画面はかなり揺れます。超望遠での撮影では、三脚を使用しているときでも手振れ補正をオンにして撮影した方が、たいていの場合よい結果が得られます。

 また、今回、ビデオカメラと一緒にメーカー推奨の1.7倍の純正テレコン(VCL-HG1737C)も購入したのですが、はっきり言ってこれは「はずれ」でした。今までHC1で使用していた2倍の純正テレコン(VCL-HG2037Y、既に販売中止)は、ズーム域で50%~100%の間はケラレなく使用できたのですが、1.7倍のテレコンはテレ端近辺を除くとケラレが出てしまうため、使い物になりませんでした。ですので、XR520VでもHC1で使用していた2倍のテレコン(VCL-HG2037Y)を引き続き使用しています(サンプル2、サンプル3)。

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写真2: 1.7倍のテレコン(VCL-HG1737C、左)と2倍のテレコン(VCL-HG2037Y、右)

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サンプル3: テレコン使用(VCL-HG2037Y)

 次に、夜景の撮影について。HC1は暗さに弱いカメラなので比較するのもかわいそうなのですが、XR520VはSTD(スタンダード)モードの場合、光量が少ない状況でもノイズがとてもよく抑え込まれており、ハイビジョンの大画面でも鑑賞に堪える絵を撮ることができました(サンプル4、サンプル5)。STDモードでの夜景は、ほぼ人間の目で見えるままの明るさで写るという印象です。特に下のサンプル5のようなカットがきっちり撮れるというのは素晴らしいと思いました。カタログスペックでは、STDモードの最低被写体照度は、シャッタースピード1/60秒で11ルクスです。

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サンプル4: 夕暮れ時(STDモード)

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サンプル5: 夜間(STDモード)

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【参考】HC1で撮影した場合

 さらに、LOW LUXモードというのも用意されており、ノイズは増えるものの、今まで撮影不可能な暗さでもそれなりに撮影ができます(サンプル6)。この場合は、見た目よりもかなり明るめに写ります。さすがに常用するのは画質面で厳しいのですが、いざと言う時には、かなり役に立つものと思われます。常に明るい時間帯に撮れればいいですが、夜しか飛ばない便とかもありますからね。ちなみにLOW LUXモードの最低被写体照度は、シャッタースピード1/30秒で3ルクスです。

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サンプル6: 夜間(LOW LUXモード)

 絞り羽根はHC1は2枚ですが、XR520Vは6枚になりました。飛行機を撮影していると、近距離の被写体(人物とか)の背景をきれいにぼかしたいというような状況はあまりないので、よく言われる6枚羽根の虹彩絞りの真価をなかなか実感できません。しかしなから、夜間の飛行機のライトや空港の照明、あるいは日中の太陽など強い光源が画面に入る場合の写り方は、かなり自然な感じになりました。サンプル4の写真と【参考】の写真を比べてみて下さい。【参考】の絞り羽根が2枚のHC1では、結構派手にクロスの光芒が出ています(これはこれで悪くないのでないかという意見もあるかもしれませんが)。

 その他、屋外・屋内でのサンプルもご覧下さい(サンプル7、サンプル8、サンプル9)。

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サンプル7: 雪の日の屋外

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サンプル8: 屋内

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サンプル9: 暗めの屋内

 ところで、私はLANC端子に接続する高機能なズームリモコンを愛用しているのですが、XR520Vのズームリモコン接続用の端子はA/Vリモート端子で、LANC端子が付いていません。これは非常に大きな問題だったのですが、A/Vリモート端子をLANC端子に変換するアダプターをネットで見つけて調達し、クリアしました。(※ただし、XR520Vではズームや電源オフ・オンはリモコンで制御できますが、フォーカスは制御できません)

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写真3: A/Vリモート端子をLANC端子に変換するアダプター

 一方、HC1と比べて使い勝手が悪くなった点もあります。HC1ではレンズ周りに大きなフォーカスリングが付いていて、マニュアルフォーカスの操作がしやすかったのですが、XR520Vはレンズの根元の小さなダイアルになってしまい、かなり操作がしずらくなりました。XR520Vでは(HC1でもそうですが)、光量が少ないとオートフォーカスはうまく合焦しないケースがあり、さらにマニュアルフォーカスにして小さなダイヤルを回してもピントがなかなか合わないケースがありました。

 HC1、XR520Vとも、液晶モニタはタッチパネルになっていて、それを使って撮影時の設定変更を行います。HC1ではメニューのカストマイズが可能で、頻繁に使うメニュー(私の場合は、特にテレコン使用のオン・オフ)を簡単に呼び出せるように変更できたのですが、XR520Vではそれができなくなりました。

 あと、これは普通の撮影ではあまり問題にはならないのですが、XR520Vでは、基本的に電源オンを液晶モニタを開ける、またはファインダーを引き出すことで行います(電源オフはその逆)。電源スイッチもあるにはあるのですが、液晶モニタの根元の小さなボタンです。ビデオカメラは、デフォルトでは一定時間(5分間)操作をしないと電源が落ちます。これはバッテリーをできるだけ持たせるために有効な機能ですが、その時は撮影時に再度電源オンする必要があります。ところが、雪が降っていてビデオカメラに防寒用カバーをかぶせてある時には、一旦それをはずさない限りどの操作もできません。現在、私はSONYのRM-1BPというズームリモコンを使用しているのですが、このリモコンも手元での電源オンはできません。

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写真4: 防寒用カバーを取り付けた状態

 現地で雪の中で撮影待ちをしていた時に電源が落ちた際には、一瞬パニックになった挙句、貴重な1機を撮り逃してしまいました(泣)。帰宅後、マニュアルをよく調べたら、この自動パワーオフは無効にできることが分かりました。今回、バッテリーは最も大容量のものを2本を用意したので、1本あたり半日程度の撮影は問題ありません。そこで、私は設定を変更して、自動パワーオフは無効にしてしまいました。(それにしても、現地でこの問題と対処方法をあらかじめ気付かなかったのは迂闊でした。やはり、買っていきなり本番に使うものではないですね。)

 とはいうものの、全体として、XR520Vは、夜間撮影にも強いカメラが欲しいというニーズに十分に応えてくれました。また、テープ交換不要なハードディスク記録式というのは、いざ使ってみると、とても大きなメリットだと感じました。この点は、XR520Vの購入前にはあまり意識していなかったのですが、一旦これに慣れてしまうと、もうテープ式のビデオカメラには戻れないと思ってしまいました。

 付属のソフトウェア(Picture Motion Browser)は、まだ一部の機能しか試していませんが、動画データのパソコンへの取り込み、サムネイル表示、再生、動画の一コマを静止画に変換するといったよく使う用途では、意外と使いやすくてとても気に入りました。また、動画データのパソコンへの取り込み時間は、20時間ほどの動画データでも2~3時間程度しかかかりません。一旦、取り込みを開始してしまえば、後は放っておくだけです。HC1の場合、20本ほどのテープを交換しながら、20時間ほどの取り込み作業をしなければならなかったことを考えると、こんなに楽でいいのかという感じです。もちろん、ブルーレイディスクなどに別途バックアップを取るという作業が追加で必要になりますが。

 動画データの圧縮フォーマットですが、HC1はHDV、XR520VはAVCHDです。AVCHDはHDVよりも編集しずらい(パソコンのマシンパワーをさらに必要とする)のですが、この点に関しては、後日改めてレポートしたいと思います。

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