Canon EOS で動体を動画撮影するためのキーアイテム(3)

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成田空港での旅客機の着陸シーン

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成田空港A滑走路のランウェイ34Lエンドの地図

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Manfrotto SYMPLA MVR911ECCN

 Manfrottoのフォーカスリモコン MVR911ECCN の使い方とその有効性を、具体的な例でご説明しましょう。成田空港A滑走路のランウェイ34Lエンドで、着陸機を撮影するとします。着陸機は遠くから近づいてきて、至近距離を通過し、滑走路上にタッチダウンします。最も接近するところでは、撮影場所から着陸機までの距離は約150m。タッチダウン地点までは約1,000mです。この時は、フォーカスリモコンでフォーカスが動く範囲を150mから1,000mに設定します。この「設定します」というのは具体的には、まず、EFレンズのスイッチをMF(マニュアルフォーカス)にします。撮影場所から150m離れたところにあるものにマニュアルでフォーカスを合わせて、リモコン上のボタン①を長押しします。すると、1つ目のフォーカス位置がリモコンに記憶されます。次に、1,000m離れたところにある別のものにフォーカスを合わせて、ボタン②を長押しします。これで、2つ目のフォーカス位置がリモコンに記憶されます。リモコンのフォーカス・ノブを左右に動かすと、フォーカスは1つ目と2つ目の位置の間を、あらかじめ設定した速さで移動します。

 撮影開始時(遠くから着陸機が接近してくる)は、フォーカス・ノブの操作でフォーカス位置を1,000mにセット、目の前を通過する際には150mに動かし、通過したらまた1,000mに戻します。ノブの操作は左右どちらかに押し続けるだけでよく、長く押し続けても、フォーカスが事前に設定した範囲を超えて行きすぎたり、戻りすぎたりしないというところが、とても重要なポイントです。これにより、実際の撮影現場でも簡単に、明るくても暗くてもジャストフォーカス(正確には被写界深度内)を維持しながら高速で移動する着陸機を撮影できます。夕暮れから夜にかけてでも撮影可能という点では、ビデオカメラのオートフォーカスよりもむしろ信頼性が高いと言えます。

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夜の出発機のプッシュバック

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羽田空港の第1ターミナル展望デッキの地図

 もう一つの例をご紹介しましょう。羽田空港の第1ターミナル展望デッキで、夜、出発機のプッシュバックを撮影するとします。この場合、展望デッキから出発前の旅客機のコックピットまでは約50m、プッシュバック後の旅客機までの距離は約250m(または200m)です。70-200mm/F2.8のズームレンズで、テレ端・絞り開放にして50m先の被写体(=出発前の旅客機のコックピット)にフォーカスを合わせた場合、APS-CのEOSでは被写界深度はわずか8mほどしかなく、フォーカス送りをしないと、プッシュバックしていくうちにどんどんピンボケしていきます。この場合は、フォーカスリモコンでフォーカスが動く範囲を50mから250m(または200m)に設定し、その範囲内で少しずつフォーカス送りをしながら撮影します。
 動体といっても旅客機の場合、その動きは規則的なので、このフォーカスリモコンを最大限に活用できます。同様のことは鉄道やサーキットについても言えるのではないかと思います。反面、軍用機(エアショーなど)やスポーツの動画撮影は相変わらず厳しいでしょう・・・。

 Manfrottoのフォーカスリモコン MVR911ECCNは、今では国内でも入手できますが、2012年6月時点では(=私がEOS導入の可能性を検討していた時期)新発売になった直後で、まだ海外でしか販売されていませんでした。7月中旬に予定されていたセントレアでの撮影(特に夜間)で使用できるかどうかを早急に確かめる必要があり、わざわざ米国から個人輸入までして事前テストを行いましたが、その結果「これなら撮れる」と分かったので、EOS Movieの本格導入を決めた次第です。逆に言えば、このリモコンが存在しなければ、EOSの導入もありませんでした。

 このフォーカスリモコンを効果的に使えば、特定の被写体については動体であっても撮影は容易という話で、私がEOSを使って旅客機の動画撮影を気軽に楽しめているのにはタネも仕掛けもあるのですが、同種の機能を持った製品は、今のところ他にはないと思います。私の経験では、はっきり言って、これなしではCanonのEOSを使った旅客機の動画撮影は現実的ではありません。被写体の横の動きについてはある程度は対応できても、前後の動きには対応できないからです。特に夕暮れ以降、超望遠での撮影でF値を下げざるを得なくなると、被写界深度がとても浅くなり、ピンボケさせずに機体の動きをフォローすることがとても困難になります。もし、CanonのEOSのカメラやEFレンズ群の資産をお持ちの方で、旅客機の写真撮影に加えて、動画撮影も本格的にしてみたいという方がいたら、上記のリモコンを入手されることを強くお薦めします。

(注意事項)
 MVR911ECCN は、カタログ上では EOS 5D Mark III、EOS 5D Mark II、EOS 1D Mark IV、EOS 7D、EOS 60D、EOS 600D/Rebel T3i/Kiss X5、EOS 550D/Rebel T2i/Kiss X4、EOS 500D/Rebel T1i/Kiss X3 で使用可能となっていますが、私が試したところでは EOS Kiss X6i でも使用できました。レンズに関しては、EF-S 17-55mm F2.8 IS USM、EF 70-200mm F2.8L IS II USM、EF 100-400mm F4.5-5.6L IS USM のフォーカス制御はできましたが、EF-S18-135mm IS STM のフォーカス制御はできませんでした。STM のレンズは、現時点では使用不可の可能性が高いので、注意してください。

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