Canon EOS で動体を動画撮影するためのキーアイテム(2)
デジタル一眼レフでの動画撮影は、NikonのD90に始まり、CanonのEOS 5D Mark IIで大きな反響を得るに至りました。デジタル一眼レフは、大きなセンサーと高性能のレンズにより高画質の動画を撮影できますが、マニュアルフォーカス、マニュアル露出が基本です。特にフォーカスに関しては、センサーが大きいために被写界深度が浅くなり、厳密なフォーカス合わせが必要になります。そのため、飛行機や鉄道などの動体(動く被写体)の撮影は困難と思われてきましたし、現在もそう思っている人は多いと思います。私は2012年の6月にCanonのEOSを使い始めましたが、その時までは全く同様の考えでした。例えば、デジタル一眼レフで飛行機の動画を撮影する場合、移動する飛行機を、高い精度のマニュアルフォーカスで追い続けなければならないからです。
デジタル一眼レフで動画を撮影する場合、プロの多くは、カメラにフォローフォーカスという機器を取り付けて、フォーカスをマニュアル操作しながら撮影しています。
写真撮影用のレンズは、フォーカスリングの回転角度が小さすぎて、それを動画撮影中に手で回してフォーカス合わせしながら撮影するというのは非現実的です。この機器を使うと、大きなダイアルを手で回すことにより、フォーカスの微調整を行うことができます。映画の撮影の場合、フォーカス操作は、カメラマンとは別のフォーカスマンが行うことが多いようですが、私が旅客機を撮影する場合は、当然のことながらワンマンオぺレーションです(笑)。離着陸機を撮影する場合、超望遠で安定したカメラワークを行うこと自体が難しいため、上の写真のようなフォローフォーカスであっても、操作しながらの撮影は事実上不可能です。デジタル一眼レフの導入検討時、動体の撮影方法についてプロのカメラマンの方とディスカッションさせていただいたのですが、この点は同意見でした。
ちなみに、ビデオカメラでも夕暮れから夜にかけてはオートフォーカスが効かなくなるので、マニュアルフォーカスで撮らざるを得ません。家庭用ビデオカメラ(例えばSONYのXR520V)では、マニュアルでのフォーカス送りは現実的ではありません。一般的なビデオカメラはセンサーのサイズが小さく、2/3インチ、1/3インチ、あるいはそれ以下です(ちなみに、XR520Vの場合は1/2.88インチ)。センサーが小さいと被写界深度が深くなるため、構造的にはピンボケしにくいのですが、実際にフォーカス固定で旅客機の動きを望遠で追ってみると、ハイビジョンでは旅客機が動くにつれてピンボケしていくのが分かってしまいます。
デジタル一眼レフの場合、センサーのサイズはビデオカメラよりもはるかに大きく、被写界深度は相対的に浅くなり、フォーカスの精度はよりシビアになります。高速で動く旅客機を、マニュアルフォーカスで追い続ける実用的な方法がないと、デジタル一眼レフでの動画撮影はできません。言い換えるなら、その方法さえあれば、撮影は特に難しものではなくなるということです。
私がデジタル一眼レフを導入する際、NikonでもSONYでもなく、Canonを選んだのには大きな理由があります。それは、前回ご紹介した下記のデバイスがCanonにのみ存在したからです。
これは、2012年の6月(=私がEOSを使い始めた時)に、Manfrottoから発売されたCanonのEOS専用のフォーカスリモコン MVR911ECCN です。EOSとUSB接続すると、リモコンのノブを動かすことにより、EFレンズのフォーカスを操作することができます。この製品の優れているところは、三つあります。
一つ目は、ビデオ用運台のパン棒に取り付けて操作できるため、離着陸機をフォローしながらのフォーカス操作が容易にできることです。二つ目は、設定により、フォーカスを動かすスピードを速くしたり遅くしたりできることです。三つ目は、これが最も重要なことなのですが、ノブの操作の際、フォーカスが動く範囲を事前に設定した2点間に限定できることです。これにより、フォーカスが行きすぎたり、戻りすぎたりすることを確実に防止することができます。
その他の機能としては、
・動画撮影のスタート、ストップ
・MFフォーカスアシスト
(マニュアルで厳密なフォーカス合わせをするために、画面を5倍、10倍に拡大表示する)
・ワンプッシュAF
・ライブビュー表示のON/OFF
がボタンひとつで操作できます。これらも、動画撮影時の操作性を著しく向上させます。
次回は、具体的な撮影シーンを例にとって、その使用法をご紹介したいと思います。