デジタル一眼レフでの飛行機の動画撮影(1)

 前回の記事で、ビデオカメラとデジタル一眼レフとで旅客機を撮影した動画のサンプルをご紹介しました。今回は、デジタル一眼レフで旅客機の動画を撮影する場合の注意点などをお話してみたいと思います。

 前回でもご紹介した上のサンプルですが、ビデオカメラ(HDR-XR520V)の動画はオートで撮影したものです。一方、デジタル一眼レフ(EOS Kiss X6i)の動画はフル・マニュアルで撮影しました。

 デジタル一眼レフで動画を撮影する場合、基本的にはマニュアル撮影を行う必要があります。シャッタースピード、絞り、ISO感度、フォーカスは、全てマニュアルで設定します。何故そうしなければならないのかという点については、
 デジタルムービー実践ガイドブック(玄光社MOOK)
 デジイチ動画レンズワークガイドブック
などの書籍に詳しく解説されていますので、本格的にデジタル一眼レフでの動画撮影に取り組みたいと考える方は、一読をお薦めします。

 ところで、私が現在使用している機材ですが、カメラ本体は既に述べた通り

 Canon EOS Kiss X6i

 レンズは、

 (1) EF-S 17-55mm F2.8 IS USM
 (2) EF 70-200mm F2.8L IS II USM
 (3) EF 100-400mm F4.5-5.6L IS USM
 (4) EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM

です。(1)(2)(3)のレンズは高価ですが、画質はとても良好です。(4)(カメラとセットで販売されているレンズ)の画質とは明らかに違うので、(4)は通常は使用していません。EOS Kiss X6i は 撮像素子のサイズがAPS-Cで、望遠に強いタイプの機種です。EOSシリーズの入門機ですが、動画撮影に限って言えば性能面でほとんど問題がありません。EOSムービーの画質は本体よりもレンズで決まると思っているので、レンズに積極的に投資をしました。また当然のことながら、これらのレンズは写真の撮影用としても価値の高いものです。

 さて、デジタル一眼レフでの動画撮影の場合、日中は原則としては

・シャッタースピードは1/60秒に固定
・ISO感度は最低値(EOS Kiss X6i の場合は100)に固定
・適正露出は絞り(+NDフィルタ)で調整

で撮影します。フォーカスも、マニュアルフォーカスで撮影します。被写体が旅客機の場合、パンフォーカス(手前から奥までピントが合っている)で撮影したい場合が多いのですが、シャッタースピード1/60秒、ISO感度100の場合、晴天の日中だと絞り値はF16~22になるので、被写界深度はかなり深くなります。夕方から夜にかけては、できるだけ明るいレンズを使い、ISO感度を上げる、シャッタースピードを落とす(ただし1/30秒まで)ことで対応します。

 上のサンプル動画では、旅客機の着陸前と着陸後では被写体や背景の明るさがかなり異なります。旅客機の動きをフォローする場合、このように1カットの中で明るさが大きく変わるケースも多いのですが、1カットの途中で絞り値を変更することは原則として行いません。1カット全体を通して破綻しないように絞り値を決めるのは、それなりに注意を要する作業です。

 デジタル一眼レフは、ビデオカメラよりも撮像素子が大きく画質面で有利ですが、フォーカス合わせはとてもシビアになります。旅客機は高速で動くので、マニュアルフォーカスで撮影するためには、被写界深度を考慮しつつ撮影時の状況に応じて、素早く精密なフォーカス合わせをする必要があります。ここが、旅客機のような動体の撮影でもっとも難しく、かつ重要なポイントです。

 デジタル一眼レフのズームレンズは、ズームを動かすとフォーカスがずれるので、画角を変えたら毎回フォーカスを合わせ直す必要があります。オートフォーカスが使えない場合、これは事実上、動画撮影中のズームアップ/ダウンはできないことを意味します。EOS Kiss X6i では、一部のズームレンズ(例えば上記の(4)のレンズ)で動画撮影時にオートフォーカスがそれなりに使えますが、とはいっても精度はあまり高くありません。(1)(2)(3)などの高性能なレンズでは、動画撮影時のオートフォーカスは遅くて精度がさらに悪く、全く使えません。これらはEOSシリーズを使った動画撮影の、現時点での制約事項です。

 旅客機の撮影では、望遠レンズを使うことが多いので、安定した映像を撮るために手振れ補正機能が役立ちます。Canonのズームレンズの手振れ補正機能は、動画撮影時も有効で、フィーリングも良好です。

 オートで手軽に撮影というわけにはいかないデジタル一眼レフでの動画撮影ですが、特に高性能のレンズを使った場合の画質は、とても素晴らしいものがあると感じています。決して扱いやすい機材ではないのですが、劇場公開用の映画やCM、歌手のプロモーションビデオなどの撮影に使えるレベルの機材を個人で扱えるというのはとても魅力的です。動体(旅客機)のマニュアル撮影にも大分慣れてきたので、今後の主力機材として活用していくつもりです。

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